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睡眠は学習に与える影響とは?睡眠周期を意識し効率よく学力向上

睡眠は学習に与える影響とは?睡眠周期を意識し効率よく学力向上

皆さんは日頃、睡眠時間や睡眠効率についてどの程度関心を持ち、また意識しながら生活しているでしょうか。

日頃、学校で担任の先生から1日4時間勉強しなさい!週末は8時間勉強しなさいなどと、口すっぱく言われている学生の皆さんは、1日の学習時間に対して、関心を持っている方は多いと思います。

睡眠時間についてはどうでしょうか。
塾を運営している肌感ですが、1日何時間睡眠をとることがベストか、何時に就寝することが自分にあっているのかなど、睡眠について日頃から関心を持ち、最適化しようと考えている割合は少ないように感じます。

睡眠時間と学力の関係は複雑であり、睡眠時間が長くなればなるほど成績が向上するわけではありません。

少し古いデータですが、広島教育委員会の調査によると、8時間以上9時間未満までは成績が向上し、そこから睡眠時間が長くなるほど成績が下降していることがわかります。
引用:『睡眠時間と学力 関連裏付ける結果も – 睡眠健康大学

学力は学習時間をはじめ様々な要因によって向上します。もちろん睡眠時間も要因の1つです。

学習時間だけでなく学力アップの要因となる全てをグレードアップすることで効果的な学力アップを実現可能です。

当記事では、学力向上に欠かせない睡眠時間や睡眠の質について解説します。

睡眠が学力にもたらす効果

睡眠は、学習定着に貢献します。
例えば、英単語帳に取り組む場合、1回で学習したすべての単語を暗記できる生徒はいません。

人間は能動的に暗記する際、ワーキングメモリを使用します。
ワーキングメモリについて詳しくは以下の記事を参考にしてください。
ワーキングメモリが低い子どもへの接し方を紹介!学力向上対策3選

ワーキングメモリで同じ内容を繰り返し学習することで記憶は短期記憶から中長期記憶にシフトします。また、中長期記憶した状態を学習定着と言います。

このワーキングメモリから中長期記憶へのシフトを生物学的観点から見た場合、海馬と大脳皮質が大きく関わっていることがわかります。

海馬には脳内で情報を探す役割があり、大脳皮質には記憶を蓄積する役割があります。
大脳皮質は別の大脳皮質と連携する特徴があり、この連携は繰り返し学習することで強くなります。

記憶形成開始時は、まだ連携が弱いため、海馬は直接大脳皮質を探す必要がありますが、時間の経過と共に大脳皮質同士の連携が強まり、海馬は求めている大脳脂質を別の大脳皮質を頼りに発見することが可能になります。
これにより、人間は繰り返し学習した内容に関しては、スムーズに思い出すことが可能です
引用:『学習と睡眠の関係は? 質の良い眠りで学習定着率をアップさせよう

大脳皮質の連携はWikipediaでの単語の連携に似ています。

塾-Wikipedia

引用:『塾-Wikipedia

Wikipediaで調べ物をする際に、説明文中の重要単語が青くなっており、クリックできることはご存じでしょうか。
仮にクリックできるようになっていない場合、わからない単語があった場合、検索エンジンを開き、別で検索する必要があります。

大脳皮質の連携がない状態は、重要単語をクリックできないWikipediaと同様に、全ての記憶を逐一探す必要があります。これに対し、大脳皮質同士の連携がある場合は重要単語が青くなり、クリックできるWikipediaと同様に、大脳皮質経由で別の大脳皮質の記憶を呼び起こすことが可能であり、この状態は、生物学的観点での学習定着を意味します。

学力定着と睡眠の関係

引用:『睡眠のメカニズム(レム睡眠とノンレム睡眠)

睡眠は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」を繰り返すことで構成されています。
レム睡眠とは体は眠っているが脳は起きている状態、ノンレム睡眠は脳も体も眠っている状態を指します。

上のグラフにあるようにノンレム睡眠時は深い睡眠と浅い睡眠を繰り返します。
深いノンレム催眠には嫌な記憶を忘れる働き、浅いノンレム睡眠には日中記憶した内容を過去の記憶と紐づける働きがあります。これは、先述した大脳皮質同士の連携によって達成されます。
レム睡眠には紐づけた日中の記憶と過去の記憶を整理し思い出しやすくするためにタグづけをする働きがあります。

睡眠には、不要な情報を忘れ、必要な情報同士を紐付け、思い出しやすくする働きがあり、子供にとって睡眠が重要な理由の1つです。

子供の睡眠の現状

日本の子供は世界で最も睡眠時間が短いと言われています。

ベネッセ総合研究所が行ったアンケートによると、学生の平均睡眠時間は以下のようになりました。

引用:『放課後の生活時間調査-ベネッセ教育総合研究所

学年が上がるにつれて睡眠時間が短くなっています。
学年と共に体力がつくとはいえ、この睡眠時間で十分なのでしょうか。

日米中韓の高校生を比較した財団法人、日本青少年研究所の調査によると、日本の高校生のうち居眠りをする割合は45.1%と高く、4か国で比較した場合、最も居眠りをする割合が高いことがわかりました。

また、比較的睡眠時間の長い小中学生も睡眠時間を不十分であると感じている割合が多く、ネットワークサービスやWebサービスを行うニフティ株式会社が、小中学生を中心とした子どもたち1,451人を対象に2022年に行った「夜寝る時間と睡眠」に関するアンケート調査によると。小学生のうち睡眠時間が足りていない割合は51%、中学生では66%と非常に高いことがわかりました。

睡眠不足の最大の理由は小中学生ともに、「家での勉強に時間がかかる」であり、勉強が原因で睡眠不足になってしまう場合、せっかく無理やり確保した勉強時間を有効活用できていないことになります。
引用:『みんなのホンネ 調査レポート

他国に比べ、子どもの睡眠不足が深刻な日本。
睡眠不足を解決しなければ、記憶する際に大きなハンディキャップを背負うことになってしまいます。

上手に睡眠する方法

学習を無駄にしない睡眠を意識する場合、以下の2点に注意しましょう。

  • 学習を無駄にしない睡眠を意識する場合、以下の2点に注意しましょう。
  • 脳が老化するため、寝すぎないように注意する

睡眠周期を意識した睡眠時間設定を心がける

学習定着を意識した睡眠を実践する場合、睡眠周期に着目しましょう。
睡眠周期は、深いノンレム睡眠→浅いノンレム睡眠→レム睡眠の流れで睡眠フェーズが移り変わることを指します。

それでは学習の定着を目指す際は睡眠周期を何周繰り返せばよいのでしょうか。

学習定着を目標とした睡眠の場合、睡眠周期を4~5周期繰り返せばよいと言われています。

睡眠周期の長さは一般的に90分と言われていますが、個人差があります。
睡眠周期の長さはアプリで簡単に測定することが可能です。
例えば、Sleep Cycleは睡眠周期がどのように繰り返されているのか可視化するとともに、睡眠の質がどの程度だったか数値で提示します。

引用:『Wake up easy with Sleep Cycle

アプリなどを用いて睡眠周期を把握し、それを最低でも4週繰り返すことが可能な睡眠時間を確保することで必要最低限の睡眠を確保することが可能です。

脳が老化するため、寝すぎないように注意する

睡眠のとりすぎは脳にとってマイナスな影響を与えます。

イギリスで行われた1つの研究を紹介します。

イギリスのウォーリック大学は、睡眠時間と脳認知能力の関係について大変興味深い研究結果を発表しています。

50~89歳の男女約9,000人を対象に同大学が行った調査では、50~64歳の人では睡眠時間が6時間未満の人と8時間以上の人が、65~89歳の人では睡眠時間が8時間以上の人がそれぞれ7時間睡眠の人と比べて記憶力と意思決定能力が低下していることが判明しています。
引用:『寝過ぎが招く脳機能の低下

引用:『高齢者の睡眠|e-ヘルスネット

年を重ねるごとに睡眠周期1周に必要な時間は短くなることから、子供の場合、8時間以上睡眠した際に寝過ぎになる可能性は低いですが、寝すぎることは脳にとってマイナスであることを把握する必要があります。

睡眠周期4~5周の睡眠を徹底し、それ以上寝ないことを守ることで、学習効率の最大化につながります。

まとめ

睡眠は学習定着の面で記憶に大きく貢献します。
どのように学習定着は進むのか、何時間睡眠を確保すべきかなど睡眠のメカニズムを把握した学習で、効率よく成績アップを実現することが可能です。

苦手な勉強、嫌いな勉強を夜遅くまでやっていませんか。
きちんと睡眠をとることで本来であれば、1回で覚えられる内容を2回3回と繰り返す羽目になっている可能性があります。

睡眠時間の確保を徹底し、少しでも苦労せずに苦手な単元を暗記できる方が、精神的にも身体的にも楽になるのではないでしょうか。

これまで無理して学習してきた皆さん、1度睡眠時間を見直し、無理のない成績アップに向けて頑張っていきましょう。