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ワーキングメモリが低い子どもへの接し方を紹介!学力向上対策3選

ワーキングメモリが低い子どもへの接し方を紹介!学力向上対策3選

発達障害の認知が高まるとともに、見聞きする機会が多くなりつつあるワーキングメモリ。
皆さんの中にも、聞いたことがある方が多いのではないでしょうか。

知能のイメージ

ワーキングメモリとは、能動的な目的志向の記憶のことを指します。
例えば、電話をかける際、電話番号を一時的に暗記する場合は、電話番号を入力するための記憶であることからワーキングメモリに該当します。
参考:『ワーキングメモリ容量とは何か? : 個人差と認知パフォーマンスへの影響-土田 幸男

ワーキングメモリの容量は人によって異なり、同時にたくさんのことを処理できる子どももいれば、1つのことで手いっぱいになってしまう子どももいます。

それでは、ワーキングメモリの容量が小さい子どもにはどのような特徴があるのでしょうか。

  • 集中力が切れやすい
  • 話した内容を忘れてしまう
  • 忘れ物が多い

ワーキングメモリが小さい場合、以上のような影響が出る場合が多いと言われています。
子どもがストレスなく日常生活を過ごすために、保護者はワーキングメモリについて適切に理解し接する必要があります。

また、ワーキングメモリが低い場合であっても、子どもに合った接し方を心がけることで十分な学力を獲得することが可能です。

当記事では、ワーキングメモリが小さい子どもの特徴と、接する際の注意点について紹介します。

ワーキングメモリとは

子ども
ワーキングメモリとは課題を行うために必要な情報を一時的に貯蔵し、計算といった処理を行うといった記憶のことを指します。

しばしばワーキングメモリと同列で語られる記憶の1つに短期記憶があります。
短期記憶とは、記憶を貯蔵する時間が数十秒から1分程度と短い期間のみ残る記憶のことを指します。

単純な短期的な記憶の貯蔵を指し、目に入ったものや体に触れたものなど五感で感じ取った全ての記憶が該当します。
これに対し、ワーキングメモリは「何かをする」といった目的意識のある記憶のことを指します。

また、ワーキングメモリは情報を単純に記憶するだけでなく、処理するといった側面もあります。

引用:『ワーキングメモリ容量とは何か? : 個人差と認知パフォーマンスへの影響-土田 幸男』

引用:『記憶障害とは 記憶障害の種類と対応』

ワーキングメモリの仕組み

ワーキングメモリにおいて情報の処理は上のようなモデルで構成されています。

音韻ループ、エピソードバッファ、視空間スケッチパッドの3種類のシステムを中央実行系が制御することで情報の処理を行なっています。

中央実行系の情報を保持する機能は備わっておらず、情報の保持は3種類のシステムによって行われます。3種類のシステムから必要な情報量を獲得することが中央実行系の役割で、情報の処理は中央実行系で行われます。

それでは、3種類のシステムはそれぞれどのような働きをするのでしょうか。

音韻ループ



音韻ループは音韻ストアと構音リハーサルメカニズムによって構成されています。
音韻ループは聴覚によって獲得した情報を保持する機能を備えており、また構音リハーサルメカニズムは文字で提示された情報を脳愛で音声として再生する機能を備えています。

音声を耳で聞いた場合は、直接音韻ストアに情報を蓄積し、文字で提示された場合は、構音リハーサルメカニズムで音声に変更したのちに、音韻ストアに情報を蓄積します。

エピソードバッファ


長期記憶から情報を取り出し、視覚や聴覚などから獲得した情報と照合する場合に使用されます。
長期記憶とワーキングメモリを繋ぐインターフェイスの役割を担っています。

過去に暗記したことに関連する内容が全く新しい内容と比較し暗記しやすい理由はエピソードバッファが機能していることが要因です。

視空間スケッチパッド



視空間スケッチパッドが機能することで、ものの位置や大きさなど言語化しづらい情報を視覚イメージとして保持することが可能です。

ワーキングメモリの限界とは

ワーキングメモリは、コンピューターにおけるCPUと同様に、容量に限界があり、限界を超える記憶や処理を行うことはできません。

ワーキングメモリは、音韻ループに聴覚情報をストックする機能をはじめとする記憶機能と、長期記憶から情報を取り出す機能や、中央実行系でそれぞれのシステムからの情報量を調整する機能をはじめとする処理機能に分かれており、両者の機能はトレードオフの関係にあります。

それでは人間が一度に処理できる情報量はどの程度なのでしょうか。

2001年にアメリカのミズーリ大学の心理学者ネルソンコーワン教授(Nelson Cowan)が発表した論文「マジカルナンバー4」によると、ワーキングメモリの容量限界は3~5チャンクだそうです。

チャンクとはアメリカの心理学者ジョージ・ミラーによって考案されたミラーの法則で登場する概念で、いくつかの情報の集まりのことを指します。
チャンクの明確な定義は定まっておらず、暫定的なまとまりを示します。

ジョージ・ミラーが著し、高田洋一郎氏が翻訳した『心理学への情報科学的アプローチ』のなかで、チャンクについて以下のように述べられています。

それをもとに、ミラーの「チャンク」について、すこし詳しくみていく。

論文では、心理学的な実験の紹介が多くの部分を占めており、それに情報理論的な話が絡んでくるので、分かりにくい部分も多い。そこでまず、チャンク化によって伝達情報量を増やす例としてあげられている、無線通信士の話をみてみよう。

「無線電信のコードを習いはじめたばかりの人には、一つ一つのトンとツーとが、ばらばらなチャンクとして聞こえる。

そのうち、やがてトンとツーの音が、文字としての塊をもつようになり、文字をチャンクとして扱うことができるようになる。

さらに学習がすすめば、文字は、より大きなチャンクである単語というまとまりをもつようになり、

やがては、単語の集まりである句全体がまとまって聞き取れるようになる。

学習によってトンとツーとがパターンに体制化され、そして、より大きなチャンクの出現に伴って、無線士に記憶できるメッセージの量が増していく。

無線士は、チャンクあたりのビットを増すことを学習するのである。」


https://heuristic.exblog.jp/25098616/


言い換えると、チャンクを小さなまとまりとして捉えることで、伝達しやすくなるものの、大量の情報を一括で伝達することが難しいことがわかります。また、チャンクの大きさは訓練によって大きくすることが可能であり、大きくなればなるほど大量の情報を一括で伝達することが可能です。
以上をまとめると、平均的な人間は1度に3~5チャンクをワーキングメモリに蓄積することが可能であり、そのチャンクの大きさは訓練によって増大させることが可能です。

ワーキングメモリの測定方法

WISC4
60分から90分で受診可能で対象年齢は5際から16際までです。
WISC4では、言語理解指標、知覚推理指標、ワーキングメモリ指標、処理速度指標と前夜位的な知的能力の5項目を把握することが可能です。

WISC4におけるワーキングメモリ指標を確認することで子どものワーキングメモリの容量がどの程度であるか把握することが可能です。現在ワーキングメモリについて不安を感じている方は1度診断を検討してみてはいかがでしょうか。

引用:『WISC-IV知能検査とは?検査の内容について解説します』

ワーキングメモリが低いことで子供が苦労しやすいポイント

ワーキングメモリが低いことで、以下のようなことに悩まされる子供が多いそうです。


  • 耳からの情報を認識・記憶することが難しい

  • 情報の整理ができず、忘れやすい

  • 2つ以上のことを同時処理することが難しい

  • 記憶を削除することが苦手で、次の行動に移ることが難しい



ワーキングメモリが低い子どもは同時に複数のことを言われることが苦手です。
「ゲーム片付けて、終わったら勉強しなさい」などといった形で1度に複数のタスクを指示してしまうと忘れてしまうため、1つ1つ指示するようにする必要があります。

ワーキングメモリが低い子どもの学力を向上させる際のポイント

サポート
ワーキングメモリは能動的に短期記憶を行い、記憶を処理する能力のことを指します。

定期試験や入試などで好成績を収める上で必要な記憶は長期記憶であることから、情報を整理することが苦手であることや2つ以上のことを同時処理することが苦手などの特徴を理解し、長期記憶できるようなサポートをすることで成績向上を達成することが可能です。

それでは長期記憶を促す際、どのようなことに取り組むべきなのでしょうか。


  • わかりやすい例に置き換える

  • メモをとるように促す

  • 学習計画を立てる際は、1度だけでなく何度も同じ問題に取り組むように設定する


わかりやすいイラストに置き換える

数学の文章問題や、国語などを解く際に理解に苦しんでいる場合は、記憶に残りやすいように、図や表、イラストなどに情報をまとめて理解を促すことは有効な手段の1つです。

音韻ループを使用することが苦手な子どもに対しては特に有効な施策です。

メモをとるように促す

メモ
ワーキングメモリが低い生徒に限らず、長期記憶をする際は、繰り返すことが非常に重要です。
メモに取ることで、ふとしたタイミングで確認し記憶を進めることが可能であることができます。

付箋などに暗記する必要がある内容を記載し目に触れる場所に貼るように促すことで記憶が定着する可能性を向上させることにつながります。

学習計画を立てる際は、1度だけでなく何度も同じ問題に取り組むように設定する

エビングハウス
学習から1ヶ月後は80%程度忘却しほとんど覚えていないことがわかります。
忘却曲線は復習を繰り返すことで緩やかな曲線にすることが可能です。

長期間に亘り持続する記憶は長期記憶であり、ワーキングメモリに依存しません。
そのため、上の表のように、何度も復習を行い、長期記憶を蓄積することで他の子どもと同様の学力を身につけることが可能です。

まとめ

ワーキングメモリは、意図を持って短期記憶を行い、またその記憶を処理する能力のことを指します。
ワーキングメモリが低い子どもは、2つのことを同時に覚えられない、忘れやすいなどの特徴があるため、保護者が解く量を正確に理解し対応する必要があります。

イラストを用いた指導や、メモの習慣づけ、繰り返し学習できるように学習計画づくりをサポートするなど、適切な対応で学力向上を促しましょう。